カルチャー

東近江に根ざす文化をアートで紐解く『エンドレス・ミトス展』開催中です!

【しがトコPR:滋賀近美アートスポットプロジェクト Vol.03】

色彩豊かな作品のスキマから、
あなたは、どんな感覚を見つけ出しますか?

若手アーティストたちによる新作が展示された
滋賀県立近代美術館による出張企画展『エンドレス・ミトス展』が、
9/19から、JR能登川駅徒歩2分の便利な会場で開催されています。

滋賀近美アートスポットプロジェクト

『エンドレス・ミトス展』は、現在リニューアル工事のため長期閉館している
「滋賀県立近代美術館」の休館期間を利用して、
県内各地、様々な地域で行われている企画展。

昨年度は高島市の朽木にて『Symbiosis(共生)』がテーマでした。

大地とともに生きる姿に触れるアートプロジェクト『Symbiosis(シンビオシス)』

第三弾となる今回の舞台は
「織物の町」として歴史ある、東近江市・能登川。
地域とアートが結びつく、期間限定の展覧会を、
しがトコ編集部で見に行ってきました。

エンドレスミトス展の建物

会場は、JR能登川駅の東口にある、
何やら歴史的な雰囲気のある建物。

かつて、滋賀銀行の前身である八幡銀行として使われ、
その後織物会社の事務所などとして使われたそう。
建物内にはそれらの面影を感じられるものも、ちらほら。
まさに「能登川とともに歩んできた建物」と言えそうです!

エンドレスミトス展

今回の展覧会では、滋賀県にゆかりある
3人の若手アーティストの方が、新作を展示。

能登川エリアで、古くから盛んにおこなわれていた「繊維業」と、
同じ東近江市内の永源寺エリアで全国的に有名な、
木の加工職人である「木地師」に焦点を当て表現されています。

それではさっそく、会場へ入ってみましょう!

見えないものを見ようとして/小宮太郎さん

会場内でよく目立つのは、
白い壁に黒い丸型をした、この作品。

この黒い丸をよーく見てみると、なにやら模様が見えてきます。

これは・・・水車?でしょうか?
そういえば、能登川にも大きな水車がありますよね!

それとは直接関係はありませんでしたが、
木地師がろくろを回す動力として使われていた水車が描かれているんだとか。

じつはこの作品、丸い型に大きな布をぴんと張ったものを土台に
布の裏側から黒い塗料を押し出してつくっているそう。

この一つひとつが、布からにじみ出てきた塗料なんです。
なんだか生きてるようで、不思議な感じ。

押し出し方や、塗料を変えたりすることで色合いが変わり、
少し斜めから見ると、凹凸がよくわかります。

スマホを使って、光をあててみるとまた違った感じにみえて面白い!
ぜひ、近づいたり、離れたり、いろんな角度から、自分の目で楽しんでみてください。

小宮太郎さん

この作品を手掛けたのは、
大津のアトリエを拠点に活動する小宮太郎さん。
もともと、目に見えないものを視覚化したり、
目に見えているものと本来の姿のズレを表現してきました。

「今回、東近江のことを調べるなかで、私が興味を惹かれたのが木地師でした。
惟喬親王がろくろの技法を伝えたといわれていますが、その話も史実としては確かではなくて。
そんな不確かな物語も面白いし、ろくろの回転で見える残像なども表現してみたかった」と小宮さん。

机の上でろくろと同じように、ぐるぐると回っているこちらの物体。
これは惟喬親王の伝説を綴った巻物をイメージしてるそう。
机に映る影とあわせてみることで巻物が完成するのだとか。
なんとも斬新な発想に驚かされます。

ほかにも、糸巻きの動きで時間の流れを表現するなど、
見えないものを視覚化する小宮さんらしい作品も。

「滋賀と京都の県境あたりにあるアトリエを拠点に活動しているのですが、
滋賀県は京都に比べていい意味で、手つかずで残っているものが多いと思います。
まだ湖北のほうには足を運べてないし、これからもっと滋賀を知りたいですね」と小宮さん。

ぜひ今後も、滋賀に関わった作品づくりに取り組んでほしいですね。

糸が生み出す不思議な世界/武田梨沙さん

2つ目の作品が、こちら。

一見、暖簾かタペストリーのようにも見えるこの作品。
風で揺れる糸がなんだか涼し気。

これは、繊維工場に残っていた麻糸を使った武田さんの作品です。

通常、布は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を組み合わせて織られていきますが、
武田さんは布の中に糸の存在感を残すのが特徴。

けっして、糸がほつれてきたわけではありませんよ(笑)

「織るという行為の中で、ある程度は糸の形を予測しながら作るのですが、
実際にできあがるものには、いろいろ計算外のことがおこって面白いです」と武田さん。

この作品の下の部分も、糸が自然に撚れてできあがった形なんだとか。

武田梨沙さんは大津市にある「成安造形大学」の卒業生。

「近江上布や、能登川の織物文化のことは在学時から知っていましたが、
実際に足を運んだのは今回が初めて。
織物産業が発展するのは水がきれいな場所が多いのですが、
能登川もまさにその通りだなと思いました」

心地良く吹きぬける風になびく糸の様子もふくめて、
糸が紡ぎ出す世界にじっくりと浸ってみては。

日常に置き去りにされたもの/藤野裕美子さん

最後に紹介するのは、こちらの作品。

四角いキャンバスに描かれた色彩豊かな絵。
そこに描かれてるのは、色鮮やかな美しい自然でしょうか?

じつは、違うんです!

白鳥の姿もありますが、これは白鳥型の植木鉢。
右下には狸の置物も描かれています。

長年放置された庭で、どちらも割れてしまっていたそう。

藤野裕美子さんの作品のテーマは「日常に置き去りにされたもの」。

その場で教えてもらって、思わず「あぁ!」と感動したのが
この絵の中央に描かれているもの。
割れた三角コーンなんです!
そういわれてみると、あの見慣れた姿に見えてきます。

藤野さんは実際に町の中を歩いてまわり、
自分が気になった「置き去りにされたもの」をコラージュして作品をつくります。

この三角コーンの実物には、造花が飾られていたというから面白いですね。

「私は生まれも育ちも東近江ですが、それでも知らない場所がいろいろあって。
今回、木地師の里にも初めて行ったんですが、空気がまったく違ってすごく新鮮でした」

絵の真ん中があいてるのも気になりませんか?
実はこの「隙間」も、藤野さんの狙いなんです。

「3つの作品に連続性をもたせたくて、作品の間にスリットをいれました。
連続する作品に同じモチーフを描いているので、隙間から覗いて探してみてください」と藤野さん。

作品の裏にも、ファブリカ村の倉庫に残っていた染め用の型を使った“仕掛け”があるので
ぜひ、会場でじっくりと目を凝らしてみてください。

まちの歴史と文化をアートで感じるプロジェクト

この巡回展はただアートを楽しむだけでなく、
能登川の町に古くから伝わる歴史やその地域とのつながりを感じることができます。

駅前だから、中学生や高校生でもフラっと遊びに見に来られます。
しかも、入場は無料!

「滋賀県立近代美術館」が休館中の今しかできない
アートと地域の歴史を掛け合わせたアートプロジェクトです。

普段は「アートにそんなに興味がないかも」と思っているあなたも、
ぜひ会場に足を運んで「アートと地域の融合」を味わってみませんか?

近隣スポットのご紹介「ファブリカ村」

会場から歩いて10分ほどの場所にあり、
そして、この巡回展に素材提供などで後援を行っているのが「ファブリカ村」。
3人の作家が使っていた布や糸なども「ファブリカ村」の倉庫に眠っていたものです。

三角屋根が特徴的なこの建物は、
繊維業が盛んだったころ、実際に繊維工場として使われていました。

今でもその名残として昭和初期ごろに製造された機織り機も残されています。

「近江の麻」を使ったストールや、地元作家の手仕事が光る雑貨なども販売されているので
ぜひ一緒に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

ファブリカ村(滋賀県東近江市/能登川)[カフェ]

<写真:辻村耕司 文:田中秀虎(しがトコ編集部 学生インターン) 編集:しがトコ編集部>

※この記事は、非常事態宣言解除後に取材したものです。
編集部はマスクを着用するほか、感染防止に最大限注意し取材しています。
被写体の人物は、写真撮影時のみマスクをはずして撮影しています。

『エンドレス・ミトス展』の会場を地図でみる

「JR能登川駅」のすぐ近く

滋賀県東近江市垣見町776

→大きい地図で見る

『エンドレス・ミトス展』の詳細情報

会期
2020年9月19日(土)~10月18日(日)
休館日
会期中無休
開館時間
10:00~17:00
場所
滋賀県東近江市垣見町776
→地図
料金
無料
お問い合わせ
滋賀県立近代美術館(平日8:30〜17:15) 077-543-2111
公式サイト
https://www.shiga-kinbi.jp/?p=23730
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